こんにちは。
鹿児島でまちづくりの会社を経営しています永山(
)と申します。ここ数年はエアギターをやったり、地元のラジオ局でMCをやったり、もはやまちづくり芸人と言われることも増えてきました。実は、8年前から株式会社ecommitという環境ベンチャーの経営にかかわっており、2016年からは取締役(経営戦略部長/店舗事業部長)としてもお仕事をしております。
株式会社ecommitは、国内で使われなくなった衣類や機械類を国内および海外に適正にリユース販売するビジネスを軸に展開しています。
ecommitは、本気で上場を目指しています。ゴリゴリの民間企業です。
私が、ベンチャー企業でIPO(株式上場)を目指しているというと、驚かれたり、疑問に終われる方も多いので、ここでその理由をご説明しておこうと思います。
具体的には、主に2つの理由から、まちづくり会社だけで仕事をするのはヤバい、と考えています。
1.まちづくり業界は生産性の認識が薄すぎてヤバい
でも書いたとおり、これからの地域づくりは規模の拡大を追求する目線ではなく、都市や都市機能を賢く縮小していくプロセスが求められます。限られた資源を集約し、最大の効果を生むためには、生産性の向上が必須です。
生産性向上。1人あたりが生み出す価値の量を増やす。
この生産性の議論が、地方ではどうしても軽視されがちです。とくに、一人ひとりの幸福度といった効果を図りづらいまちづくり領域では、生産性向上へのプレッシャーがかかりづらいものです。
・プロジェクトのゴール指標(KGI)を常に意識できているか
・ゴール到達に向けたプロセスにおいて必要不可欠な指標(KPI)をしっかり意識できているか
・ゴールに向けて、合理的なプロセスを経ているか
・最小のコストで最大の効果を達成できているか
これら、ビジネスの世界であたりまえとされている考え方が、まちづくりの業界では常識ではないのです。
だからこそ、私は体の半分をビジネス領域に置き続けることにこだわるようになりました。
これまでの8年間のecommitでのキャリアの中では、カントリーリスクを読み切れずに倒産の危機を迎えたり、Webの更新頻度とテイストを変えることでダイレクトにリアクションが変わったりと、ビジネス上の様々な判断とそれにともなってドラスティックに成果が変わる場面をたくさん経験してきました。
常にヒリヒリする緊張感に身を置くことが、僕にとっては生産性向上を意識づける最良の方法です。
2.出会う人の種類が固定化されちゃってヤバい
まちづくり業界に限らず、何かしらの職種で働いていると、特定の業種や業界、属性を持った人たちに交友関係が限定されるリスクがあります。
まちづくり業界では、①行政関係者 ②商店街関係者 ③メディア関係者 ④同業者 との接点が増えます。これに加えて、政治家や、自治会町内会関係者との接点もありますが、コミュニティを軸にした仕事になるため、どうしても深く濃い付き合いが長くつづく業種であるため、環境の変化を感じづらくなります。
とくに鹿児島におけるTen-Labのように、特定エリアのまちづくり業界でそれなりに名前がとおってくると、「Ten-Labさんですよね、よくお名前を拝見しています」みたいな感じで連絡くださる方も多く、そうなると自分たちの取り組みをゼロベースで説明する場面が減り、関係性がどんどん閉じていってしまいます。
関係性が固定化した中では、新しいアイデアも、客観的な目線も得られません。だからこそ、まちづくり業界をあえて離れる時間を強制的にとるようにしています。
私にとっては、その「別業界」が、ベンチャー企業の経営という領域でした。
実は、まちづくり業界での経験はベンチャー経営にも生きる!!
まちづくり領域からベンチャー企業経営にフィードバックできるものもあります。それは、組織開発・モチベーション開発の領域です。給与がモチベーションとなって組織を形成している民間企業に対し、まちづくり領域では「まちを思う気持ち」「地域への愛着」といった、金銭的なものではない内発的動機によってチームが形成されます。
この内発的動機を軸にしたチームは強いです。企業体も、可能な限り社員一人ひとりの気持ちに火をつけるべく、組織のミッションを共有したり、一人ひとりの理想の未来を言語化するサポートを通じて「給与だけじゃない所属意識」を醸成しようとしますが、このテーマに苦戦している企業は少なくありません。
僕は、まちづくり領域におけるチームビルディング・コミュニティビルディング面での学びを生かしたミーティングの設計や研修の企画を行うことで、(いまのところ)企業体に対して貢献できているのではないかと思っています。
人生100年時代。
ひとつの業界・ひとつの業種のみでずっと楽しく仕事を続けるというのは幻想になりつつあります。
今回は「まちづくり会社」×「環境ベンチャー」という働き方のご紹介でした。このように掛け算をすることで、双方の領域に前向きな効果を発揮できる例は、実は少なくないようで。
ちなみに、僕の周りには、「ヨガ講師×ラジオディレクター」とか、「エアギタリスト×Youtuber」とか、「タツノオトシゴの養殖業×空き家再生請負人」とか。複数の肩書、複数の業界を出入りしつつ楽しく暮らしている方がたくさんいらっしゃいます。
まちづくり業界にかかわらず、いろんな業種において、異業種との掛け算的なキャリアを描くことの重要性はこれから増していくのではないかなと感じます。
みなさんは、どんな掛け算を描きますか?
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