宮さんのTen-Lab日記 ①(5月 第1部)

「改新小とTen-Labの風に吹かれて」Ⅰ

 

 5月4日みどりの日、私は久しぶりに桜島フェリーへ乗船した。連休のど真ん中、さすがに朝から多くの人々で船内は混み合っている。私は一般社団法人鹿児島天文館総合研究所Ten-Lab(以下、Ten-Lab)の改新小オフィスに向かうところだ。

 

 Ten-Labとは、4月から私の新しい居場所となった街の総合研究所である。天文館という街で産声をあげたが、発足してもうすぐ6年、今では県全域で活動している。「多様な立場にある地域社会の一人ひとりが役割と居場所を実感し、自分たちなりの幸せを実感できる関係性づくりを、当事者に寄り添い、ともに考えながら実現する」をミッションとしている。

 

 改新小オフィスとは?なぜ桜島にオフィスが?去る3月15日、鹿児島市は2014年で廃校になった旧改新小学校(桜島古里町)の施設を、地域活性化を目的にTen-Lab等3事業所からなる共同体に無償で貸し付ける契約を結んだ。今後共同体は、鹿児島市に提示した利活用イメージや運営方針にもとづき、かつ地元の人の声を聞きながら理想の学校活用を図っていく。というわけで、Ten-Labの主なオフィス機能は現在の易居町オフィスからここ旧改新小に移ることになったのである。

 

 ターミナルで理事長の永山に拾ってもらい、まもなく目的地旧改新小に着いた。桜島は2日朝早く噴火し、噴煙が今年最高の火口から4000メートルの高さまで上がったが、現地にほとんど降灰の跡形が見られないのは不思議だ。

 内装・外装、リニューアルされた旧改新小を見学する。残された机や椅子の数が、1997年休校、2014年廃校を物語っている。これが少子化、過疎というものか。その姿が今歴然と私の目の前にある。感慨にふける。耳を澄ませば、校舎のあちこちから当時の児童たちのにぎやかな声が聞こえてきそうだ。

 

 現実に目覚める。そういえば、利活用イメージのひとつに「通常は食料などの物資を備蓄する倉庫に」「災害時は施設全体を防災拠点に」とあった。スペースが許せば強震度の体験ルームや噴火・水害・火災の恐ろしさを3Dで体感できる施設等を整備し、防災訓練を厳しく教えてもらえるスクールなど開いたらどうだろう。

 

 11時前、私には初めての理事会が始まった。メンバーは、理事長の永山由高、理事・事務局長のあすみんこと飯福あすみ、常勤スタッフでアシスタントディレクターのれいこっぷこと河野礼奈、そしてオブザーバーとして、7月からここの住人となる(隣接の教員住宅に住む)東京の人・森本健太と私、計5人である。他に3人の理事がいるが今日は欠席している。森本は、移住関係のイベントを通して鹿児島およびTen-Labとつながった人間だ。

 

 なお、彼らはお互いをあすみんとかれいこっぷとか愛称で呼び合う。ちなみに、れいこっぷは河野礼奈がTen-Labに縁ができた折にちょうど話題になっていた布団クリーナーの名称である。森本はもーりーにすぐさま決まったが、私の愛称はなかなか決まらず次回に持ち越した(年齢、格好…何彼につけて異色な私だから)。なぜか永山には愛称がない。本人にその理由を問うと「永山は永山ですから」の答え。いささか面食らってしまったが、なるほどそうか。説明は要らない。「永山」はコミュニケーション記号化しているのだ。

 

 みんなはノート型パソコンを立ち上げ、私はノートを広げる。「たかがノート」と言うなかれ、「されどノート」である。最近は使い勝手のよい進化を遂げたノートがいろいろあるぞ(アナログ派の矜持!)。

 

 永山のパソコンから音楽が流れ始める。会議のBGMだ。その中には、ミスチル(Mr.Children)のなつかしい曲『イノセントワールド』もあった。昔、息子たちがよく聴き歌っていたものだ。ミスチルが好きな永山らは自分の息子たちと同年齢なのだと改めて思い知らされる。窓からの風がこれまた心地よい。そういえば、浜田省吾に『五月の風に』という歌があった。

 

 会議はチェックインから始まった。近況などを手を挙げた順に話していく。集まった人を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気をつくる等の手法=アイスブレイクのひとつだろうか。「阿久根の『北薩カレーフェス』に行ってきたが、午前中で売り切れるなど盛況であった」というれいこっぷに続いて私が手を挙げる。

 

 仲間入りのお礼と自己紹介の後、「今年度はTen-Labの活動を見学・勉強し、併せてその活動をPRしてきたい。また、ネットワークづくりと親父ギャグ担当の役割をしっかりと果たしていきたい」と抱負を述べた。

 

 ちなみに、Ten-Labは活動上のダイアローグ(対話)とファシリテーション(人々の意見を引き出したり、つながりをつくったりする方法)の軸として「U理論」と「NVC」を用いている。「U理論」や「NVC」については追い追い触れていきたい。

 

 次から本題に入る。議題はオフィス移転に関する件と今年度事業の企画コンペ等への対応状況についてである。スムーズに進んだ。

 

 チェックインあればチェックアウトあり。会議の終わりはチェックアウトだ。

会議を終え何でも話してよい場。れいこっぷの「お腹すいた!」、何といってもこれで決まりである。

 

 

 こうして理事会は終わった。とにかく会議の進め方が新鮮であった。そして、この場は私にやさしかった。ここでは、力むことも肩肘張ることもない、いらぬ虚勢を張ることもない。自然で素直な自分だけがいた。メンバーがかなり年下だからということではない。むしろ彼らとの接し方には緊張や気配りを伴うものだ。ありがとう初めての理事会。(Ⅱに続く)