久しぶりのTen-Lab Blog更新。
今日は、5月に石川県金沢市で開催された「第10回 全国スポーツクラブ会議2016 in かなざわ・いしかわ」でのファシリテーションについて、備忘録的にまとめようと思います。
個人的には、初めて800人規模の場を本格的にファシリテーションさせていただいたという印象深い案件です。
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①全国スポーツクラブ会議とは
全国の地域密着型スポーツクラブが一堂に会するスポーツクラブ界の一大イベント。
今年は金沢に全国から800名のクラブ関係者が集まり、「地域スポーツイノベーションを拓くクラブマネジメント人材の育成」をテーマに5月21日、22日の2日間に分けて石川県金沢市で開催されました。
この会議の金沢側実行委員会事務局長の西村貴之さん(金沢星稜大学講師)とは、この2年ほどいろいろお世話になっており、「ながやん、これのファシリやって」との連絡を昨年の夏に受け、恐る恐る引き受けたという形です。
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②私の役割とミッション
会における私のミッションは、「参加者一人一人がつながる場をつくること」と、「一人一人が自分自身の小さな一歩を踏み出すこと」。
そして私の役割は、2日間のセッション全体の進行と、オープニングクロストーク、振り返り時間、ワークショップのファシリテーションでした。
この仕事の話を最初にお聞きしたときの印象は下記でした。
●自分にとっては過去最大規模の場づくり。これは自分の力を試すチャンス
●お世話になっている人たちに恩返しをするには良い機会。精一杯をぶつけたい
けれど、いろいろお話をお聞きするうちに、下記の不安が湧いてきました。
1)800人規模で深い対話をすることは果たして可能なんだろうか
2)前提条件が大きく異なる人たちを前に、どのようなテーマでの議論が可能なのだろうか
3)事務局が金沢、僕は鹿児島という距離の中で、どれだけ事前に本質的な部分のすり合わせができるだろうか
などなど。
そりゃそうです。
800人の中には、このみち15年の大ベテランから、このみち半年の見習いマネージャーまで多様な人がいるわけで。
まずは、参加者のみなさんがこの場に期待することを類推するところから始めました。
【参加者の皆さんが持っているであろう期待感】
A.自分のクラブの運営に活かせる情報をインプットをしたい
B.自分のクラブの運営を相談できる仲間やネットワークが欲しい
C.金沢の街を楽しみたい
D.自分がこれまで培ってきたクラブ運営のノウハウを他団体にシェアしたい
E.全国のクラブ運営仲間との旧交を温めたい
F.これからのクラブ運営を考える際のヒント(アイデアや考え方)を得たい
ざっとイメージするだけでも多様な期待感が想定されます。
当日、これらの多くのニーズを満たすためには、ファシリテーターとしてガチガチに場を固めるよりも、可能な限り手放した設計が必要だろうなと思いました。(とても勇気が要りますが。)
また、前提も立場も異なる800人の人が2日間の対話を行うにあたり、最低限の前提として共有しておくこの場の意味や目的を深くインストールしてもらうためのフレームも提示しておく必要を感じていました。
さらに、対話のために必要な材料がある程度インプットされていることも重要です。
加えて、具体的な行動を生みだすというミッションのためには、一人一人が自分の立場を改めて見直し、地に足のついた最初の一歩を設計する時間が必要です。
これだけのことをやろうと思うと、丸二日間あっても時間がたりるかどうか・・・。
「あっちをひいてはこっちを落とす」といった設計作業をひたすら詰めて、ようやく形がみえてきました。
初日は①会場全体で目指す議論の道筋の共有(フレームワークの共有)と、②2日目の対話の材料を共有する。
2日目は③一人一人が自分の立場を改めて認識することと、④具体的な行動についての思考を深める時間をつくる。
まず最初にその場の目的を考え、続いて参加者のニーズを想定し、次いで全体の時間の中での役割を設計していくという段取りは、私が通常のファシリテーションの現場で常に意識していることです。今回もその基本に忠実に、場を設定していきました。
当日私が使った資料は、こちらの全国スポーツクラブ会議2016inかなざわ・いしかわのホームページをご覧いただきたいと思いますが、個人的な振り返りと自己評価を以下に記していきたいと思います。
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③個人的な自己評価と、できたこと、できなかったこと
自己評価:70点
【できたこと/よかったこと】
(全日通して)
●800人全員と知り合うことはできなくとも、10名前後の「かなり深い知り合い」が生まれた
●多くの情報にたいして、それらを自分のなかでどのように受け止めるかを整理しながら全体を進行することができた
(初日について)
●2日間にわたる会議の中心を構成するコンセプト(やりたいこと・できること・求められること のバランスをとるということ)を適切にインスト―ルできた
●クラブメッセでの学びをしっかり自分の活動に紐づけて整理する時間を作ることができた
(2日目について)
●参加者のお一人お一人が自分自身のクラブに関わる意味や意図、目的を丁寧に振り返ることができた
●クラブが地域課題解決にチャレンジする道筋としての思考法をインストールできた
といった部分では、確かな手ごたえを得ることができました。
【できなかったこと/もっとやれたはずのこと】
(全日通して)
●対話の時間以外にも、もっとコミュニケーションが生まれやすくなるような仕掛けが作りえたはず。
→名札の工夫など
●対話の時間に、ちょっとしんどくなった方へのケアが十分でなかった。
→休憩場所を会場内につくるなどの配慮をすべきであった
●もっと参加者の皆さんの発表の時間をつくり、その場での成果を全体にシェアする時間をつくりたかった。
→同じ時間を過ごしながら、異なる学びを得た人の目線を共有したかった。
という感じ。
できたこと、できなかったこと、多々ありますが、今こうして振り返ってみて、それなりによき時間をつくれたように思います。
※終わった時は、できなかったことばかりに目が向いて疲労困憊になるのですが、こうしてみると、出来たことも多かったかも。
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④今後に向けて
今回、800人という超大型のダイアログを設計し、運用してみましたが、実は800という数字それ自体に意味はなく、分解するとやっぱり3~5人での少人数での話しあいが基盤になっています。
その意味で、普段やっている10~50人規模のダイアログの精度を高めることが、そのまま規模を大きくしたときにも生きるということになりますね。
ファシリテーションという言葉、その役割をスポーツクラブに関係する皆さんに少しでも認識していただく機会となれば、私にとってはとても嬉しいことです。
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最後に、今回の貴重な機会をいただいた第10回全国スポーツクラブ会議 in かなざわ・いしかわ の皆様(特に、西村先生、森さん)、事前の打ち合わせから入っていただき、当日も心強い後押しをくださった宮崎の河野さん、今回のご縁のそもそものきっかけをつくってくださったSCCの太田さん、本当にありがとうございました!!!
